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【レセプト講座vol.2】保険診療と自費診療の違いについて学ぼう
こんにちは、こあざらし(@ko_azarashi)です。
前回のレセプト講座初回記事では、レセプト学習の目的について考えてもらう内容となっていました。
私がこれから伝えていきたいのは、レセプト実務スキルの向上です。
初心者の人にもレセプトを分かるように、なんとか説明していきたいと思いますので、一緒に頑張っていきましょう。しばらくレセプト入門編の内容です。
ということで、今回のテーマを設定しました。
知らなくてもレセプトを見ることはできますが、これから医療事務としてレセプト業務に携わっていくのであれば必ず知っておきたい基礎中の基礎の内容です。
難しいことではありませんので身構えなくても大丈夫です!覚えなくても良いので読み流して理解いただく程度で本記事を使ってください。
保険診療と自費診療
保険診療とは、健康保険証を使った請求を行える内容の診療のことです。
逆に、自費診療(自由診療)とは、健康保険証が使えず全て患者負担となる診療内容のことです。
これは多分なんとなく多くの人が理解出来てる部分と思います。
今回の記事では、この線引きをもっと深掘りしてイメージしやすく解説していきますね。
健康保険証って何?
国民皆保険制度って聞いたことがありますか?
この健康保険ってやつは、種類が一つではありません。所属する会社や勤務業種によって加入する健康保険の種類が決まっており、自由には選べないようになっています。
ざっくりと次の3つの健康保険に振り分けになっています。(分かりやすくするために例外などの細かい部分の説明は省略)
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社会保険(社保)→会社員や公務員など
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国民健康保険(国保)→自営業者、無職の人など社会保険に加入していない人
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後期高齢者医療制度(後期高齢)→75歳以上の人
このような3つの健康保険に分かれていることをイメージして、覚えてください。
また、社保では、協会けんぽ(中小企業)、組合健保(大企業)、共済組合(公務員)のような分類になっていますので、これも知っておくと良いですね。別に覚えなくても大丈夫です(笑)
社保は会社が加入する【健康保険団体・組合】、国保は【市町村】、後期高齢は【各都道府県の広域連合】が健康保険を管理してるイメージ。
それぞれの保険団体が加入者から集めた健康保険の加入料を財源に、医療機関で診療を受ける際の費用負担を軽減させる運営をしています。
私たちは健康保険の加入証明書である健康保険証を医療機関に提示すれば、その仕組みを容易に利用することが出来ます。
保険証の提示により、医療費の自己負担額は総医療費に対して3割分のみの窓口支払いで済みます。(未就学児や高齢者は自己負担額が異なります)
保険無加入の人も稀にいる
基本的に国民は全員加入することとなってますが、もしも何らかの特殊な事情で健康保険のどれにも加入していないという無保険の人は、もちろん、保険証を持っていないので、この健康保険の仕組みを利用出来ません。つまり、窓口負担の3割分と、残りの7割分どちらも自分で支払わなくてはならず、全額(10割)自己負担の自費診療という形になります。
保険診療の決まりごと
保険証を使える診療(保険診療)とは一体どんなものか分かりますか?
まず、医療費の計算はどのように行われているかというお話をします。
医療費の計算をする際、医療機関は、『診療報酬点数表』という診療行為を点数ルール化した点数表に従い請求書を作成しています。
この点数表は国が保険診療と認める行為を点数一覧化したものです。つまり、単純に考えて、この点数表に載っている診療行為であれば保険証が使える保険診療になるということになります。
この点数表は厚生労働省が発出するもので、2年ごとに大きな改定が行われます。事前に改定内容が知らされ、年度替わりの4月から施行となるのが通例です。
ところで、この点数改定は何のために行われるものかというと、日々進歩する治療や検査方法を新たに保険承認して保険診療としての点数項目を増やしたり、要らなくなった点数項目を廃止したり、物価に見合った点数に修正したり、最新の情報を点数表に反映させるために行われています。
大きな点数改定は2年おきですが、細かな改定は随時行われており、2年の間の年にも、まとまった小さな改定があります。毎年、4月からは改定された点数が増えるとイメージしてたらいいですよ。
保険診療が請求出来るものってどんなもの?
診療行為
保険承認されている治療方法であること
保険診療の診療行為として認められているかは点数表の中に載っているかどうかで判断します。しかし、載っていないものでも近似するもので「準用」という形で請求できる場合があり、初心者の場合はなかなかその判断が出来ないと思います。
それはレセプト学習を進めていくうちに徐々に感覚を掴んでいくものなので、最初は分からなくて大丈夫です。
薬剤
保険承認されている薬剤であること
薬剤の場合、保険承認されると「薬価基準」というものに収載されます。保険診療として認可された一律の薬価格が示された薬版の保険点数表です。この薬価基準に収載されない限り、保険は使えません。なので、薬剤を請求する際には必ずこの「薬価基準表」という点数表に従い、算定を行います。
また、保険請求をする場合、お薬の説明書である「添付文書」通りの用法・用量で使用された場合が保険の使用が認められるものなので、用法に沿わない方法で使った場合は保険外となります。
材料
保険承認されている材料であること
「特定保険医療材料」として点数収載されたものでない限り、使用したとしても保険請求はできません。また、薬剤と同様に、使用方法について「添付文書」があり、保険として認められているのは添付文書で指示のある用法のみです。用法に従わない方法での使用では保険請求ができません。
施設基準
施設基準を満たした医療機関、人員での診療であること
保険診療を行うためには、一定の人員や設備環境を整える必要があり、地方厚生局に届け出た上で請求可能となる保険点数項目があります。これは、点数表とは別に厚生労働大臣が定める基準の告示があり、細かい内容が示されているもので、これが、施設基準と呼ばれるものです。
点数表に「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして保険医療機関が地方厚生局に届け出た〜」という条件が必要なものには書いてあり、その場合にはこの基準を満たしている必要があります。届出をせずに、保険請求をすることは出来ません。
「保険承認されたもの」というのがキーワード
上記に一つでも当てはまらなければ、保険診療としては扱えません。
保険が認められるまでには、厳しい審査と話し合いが行われています。保険で認可するのは、「こういう場合に限定ですよ」という条件が点数表にはルールとして示されていますので、請求をする際にはそのルールを熟読し、該当するかを確かめた上での算定をすることになります。
保険で取り扱えない診療は残りの7割を健康保険から支払ってもらえないため、全額患者が負担する形となってしまいます。
健康保険の使用は、病人・怪我人という前提がありますので、予防を目的とした診療や審美的な目的の診療は保険診療の対象から除かれます。そのため、健康診断や予防接種、美容整形などは保険が効かないものとされています。
保険診療と保険外診療の併用は禁止
保険診療と自費診療を混合した診療費請求は原則認められておらず、禁止となっています。
混合診療を認めてしまうと、患者の負担が不当に拡大する恐れがあったり、科学的に根拠のない特殊な医療の実施を助長する恐れがあるためです。
混合診療の解釈
A病名に対して、保険で認められている診療を行い、また、保険で認められていない診療も併用して行なっていくことは禁止という意味です。
A病名の診療は保険診療、B病名の診療は自費診療というのは、混合診療にはあたりません。
また、保険外併用療養費制度というものがあり、これに定められている項目については、例外的に保険・保険外費用の併用請求が認められます。
さいごに
保険診療になるものと自費診療になるものの違いは何となく見えてきたでしょうか。
このことを知っているか知っていないかで、レセプトを学習していく流れの中で理解度に差が出て来ます。
保険と自費の線引きが何を基準に分けられているのか分かれば、レセプトの点検がしやすくなりますので、今回お伝えしたポイントをまず理解してレセプト学習に進んでください。