検査・病理

B型肝炎ウイルス検査項目の違いを解説!レセプト算定時に意識してみよう

2020年8月14日

こんにちは、こあざらし(@ko_azarashi)です。

期間限定で記事テーマを募集したもので、今回はB型肝炎ウイルス検査についてまとめました。

レセプトに関する記事リクエスト内容

いつも勉強させてもらっています。以前もDMで質問させて頂きました。今回はB型肝炎検査についてです。
質問者さま
  • HBe抗原、抗体
  • HBs抗原、抗体
  • HBc抗体半定量
  • HBV-DNA…

以上のものがB型肝炎の検査として挙げられますが、当院のドクターはB型肝炎患者に対していっぺんに検査することが多く度々査定されています。

化学療法や免疫療法患者に対しての検査や、肝炎の確定がなくとも認められるものもありますが、具体的にどの検査がどういう病状の時に適切なものなのかご教示頂きたいです。

よろしくお願いします。

レセプトで算定するB型肝炎ウイルス検査の違いを理解するために

こあざらし
B型肝炎ウイルス検査は、内容が非常に奥深く、全てを説明しようとすると論文のようになってしまうため、かいつまんだ部分の話だけになりますがご容赦ください。

この病名の時は絶対コレ!というわけではなく、臨床的意義を理解してもらうことで、その必要性をなんとなく感じてもらう、そんな解説内容になるかと思います。

B型肝炎ウイルス検査の違いを知るために、まずは基礎的なお話から順々に書いていきたいと思います。

私も独学であったり、自力情報収集となりますので、医学知識が正確じゃない部分もあるかもしれません。記事内容に関しましては一応色んな文献を読んだ上で抜粋し、私なりに噛み砕いたイメージだということでご理解いただけたら幸いです。

詳しい診断基準については日本肝臓学会ガイドラインを参考にしたらいいと思います。

こあざらしの記事を読んでからだと、イメージしやすくなると思いますので、後ほどガイドラインを読んでいただく方がいいかもしれません。

抗原と抗体の違い

検査ではよく目にすると思いますが、そもそも抗原と抗体ってなんなのでしょう。

そこを知っていきたいと思います。

抗原とは、ウイルス・細菌やアレルギーの元となる物質(卵、花粉、小麦など)等、体内に入ってくると外敵とみなされるものであり、免疫反応を引き起こす物質のことを言います。

抗体とは、体内に入ってきた抗原を排除・中和するために作られる体内の対抗物質のことを言います。

ざっくりこんな感じです。

つまり、抗原とは体内に入ってきてもらっちゃ困る異物、抗体とはそれをやっつけるために免疫機能が体内で作り出す対抗物質です。

こあざらし
自己免疫疾患では、抗体がウイルスや細菌といった外敵に対して反応するのではなく、自分の細胞を外敵と認識して抗体が作られ、自分自身を攻撃してしまいます。自己免疫機能が誤作動してしまう病気です。

HBs,HBc,HBe,HBVの違い

B型肝炎ウイルスの検査項目としてよく見かけるHBs,HBc,HBe,HBVのことについて次は解説していきたいと思います。

これらの検査は略称なので、そもそも何の略かを知っておきたいです。

  • HBs抗原 Hepatitis B virus surface antigen
  • HBc抗原 Hepatitis B virus core antigen
  • HBe抗原 Hepatitis B virus e-antigen
  • HBV     Hepatitis B Virus

このようになってます。

Hepatitisとは肝炎を意味します。

こあざらし
Hepatitis B virus でB型肝炎ウイルスですね。

その後に続く単語の頭文字を取って検査項目名というのは作られています。

英語を思い浮かべると違いが区別しやすいです。

  • HBs抗原→ surface antigen
  • HBc抗原→ core antigen
  • HBe抗原→ e antigen

HBs抗原はウイルスの外殻表面にあるタンパク質を抗原とするもの(表面)

HBc抗原はウイルスの中核部にあるDNAを包んでいるタンパク質を抗原とするもの(中心部)

HBe抗原はHBV増殖の際に過剰産生されるe抗原と呼ばれるタンパク質を抗原とするもの

こあざらし
卵のようなものをイメージしてもらったら分かりやすいと思います。

殻の表面部分にHBs抗原を含んでおり、黄身の薄皮部分にHBc抗原が含まれているイメージです。HBe抗原は黄身内部にあるものですが増殖時には過剰産生されることで血液中に流れ出ます。

HBc抗原の検査項目がないという不思議

HBs抗原HBe抗原には単独の検査項目があるのに、HBc抗原検査がないというのは気になりませんでしたか。

私はちょっと気になりました。

抗体はHBs、HBc、HBeの3種類ともあるのに、なぜかHBcの抗原検査だけ保険点数に見当たらないんです。

こあざらし
B型肝炎ウイルスコア関連抗原(HBcrAg)[hepatitis B virus core-related antigen quantification]という検査があるじゃんって思われた方。

これは、HBc抗原HBe抗原p22crというウイルスの核形成するタンパク3種類が対象となった検査です。卵で例えた黄身部分に含まれているタンパク質ですね。

残念ながらHBc抗原単独の測定をするものではありません。

HBc抗原とはそもそもHBs抗原の外殻に包まれた中核部に存在するタンパク質です。

通常、HBs抗原のタンパクに包まれてるわけですから露出していないんですね。今のところHBc抗原を単独で抽出する方法はなく、現在も研究中で、保険収載もされていないという状態です。

そのためHBcには抗原の検査はなく、抗体検査しかありません。

肝炎ウイルス増殖のメカニズム

HBV(B型肝炎ウイルス)が増殖する際のメカニズムというのも検査を算定する解釈では必要な知識だと思うので知っておいてもらいたいです。

こあざらし
HBVは肝細胞内で増殖します。

肝細胞内にHBVの核が侵入し、ウイルスに感染した細胞となることにより、その細胞から新たなウイルスが複製されていくという仕組みです。

肝細胞に侵入する際、HBVは外殻(HBs抗原含む殻部分)を脱ぎ捨ててウイルス細胞のコア粒子(HBc抗原に包まれたウイルス遺伝子DNA)だけを侵入させます。卵で例えると、殻の中にある黄身部分だけが肝細胞内の核内に移動していくイメージです。

侵入すると肝細胞の核内でウイルス遺伝子を形態変化させて、感染肝細胞を作ります。

感染した肝細胞内では、肝細胞の機能を利用してウイルスが増殖をし始めます。

HBc抗原p22cr(プレコアタンパクの1種←コアになる前のタンパク)、HBe抗原がそれぞれバラバラ部品のように複製されていき、最終的に肝細胞工場内で組み立て終わった完成品が肝細胞外へ放出されていくという流れです。

HBe抗原はHBVの活動性を示す

HBe抗原は複製の際に他の部品と同じように産生され肝細胞内で増殖しますが、過剰産生されたものがそのまま単独で細胞膜を通って血中に放出されていきます。HBe抗原が陽性の場合、肝内でのウイルス増殖が盛んに行われており、血中でのHBV量も多くなっていると考えられ、感染力が高い時期と考えられます。

HBe抗原の陰性化はHBe抗原産生ウイルスの減少、あるいはHBe抗原を分泌しないHBe抗原非産生変異ウイルスの存在を疑います。

HBe抗原が消失したのに肝炎が続く場合などは、変異ウイルスの存在が疑われるので、HBV核酸定量HBV核酸プレコア変異及びコアプロモーター変異検出という検査を併用して診断を行うようです。

急性肝炎や劇症肝炎などに進展する可能性がある重症例では、変異ウイルスが高率で検出されることが明らかになっているようです。なのでそのような症状が疑われる場合は、鑑別診断のために検査が多項目に渡り併用されるものと思います。

放出されるのは完全なウイルスと不完全なウイルス

感染細胞から放出されるウイルスですが、全てが完全なウイルス粒子となって細胞外に出ていくというわけではないようです。

HBs抗原タンパクは過剰に産生される傾向にあり、出来損ない?みたいなものも生まれるようです。

HBs抗原の殻だけのものだったり、HBs抗原HBc抗原p22crだけを含みDNAが含まれていないものだったり、不完全なウイルス粒子で肝細胞外に排出されるものがあり、これらは中空粒子と呼ばれています。中身空っぽなんで、感染力なし、増殖機能なしです。

そういうものも血中に浮遊していきます。

こあざらし
完全粒子でも不完全粒子でも、とりあえずHBs抗原に包まれていますよね。

HBs抗原検査ではこの両方を含んだ総数を調べる検査になります(恐らく)。となると、実際にDNAがあるウイルス量とは多少数値に差がある結果が出るものです。正確な完全粒子のウイルス量を測るには、HBV–DNA検査、つまり、HBV核酸定量の検査が必要になります。

あと、HBs抗原にも変異が起こる場合もあり、検査結果が陰性化することもあるようなので、その疑いがある患者には鑑別検査を併用します。

血中に浮遊しているHBVをイメージする

増殖のメカニズムをイメージすると、血中に放出されるHBVの形が少し分かって来ませんか?

HBV感染の血液中には、完全体のウイルス粒子、不完全体のウイルス粒子、e抗原のようなものが漂っていると考えられます。

完全体も不完全体もどちらもHBs抗原に包まれているので、中身空っぽかどうかは置いといて、HBs抗原を調べることで、とりあえず血中のHBs粒子量が分かり、感染の有無や活動性が確認出来ます。

HBs抗原が陽性の場合は、ウイルスが好き放題活動してる状態と考えられます。

HBs抗体が陽性の場合は、ウイルスを中和した上で抗体が余ってるのでウイルスに打ち勝ってる状態と考えられます。

ただし、HBs抗原が陰性になっていても、体内から完全にウイルスがいなくなったという判断はできません。HBVは一度感染すると細胞内から追い出すことは難しいウイルスです。

なので、薬剤等でウイルス量を減らして血中ウイルス量が陰性化したとしても、肝細胞内に残ってるウイルスまで排除することはできていないため、観察していくことが必要です。

こあざらし
免疫抑制剤や化学療法などによって体の免疫機能が低下することによって再活性化することがあり、定期的に検査を行い、再活性していないかを調べます。

HBe抗原が陽性の場合は、複製が頻繁に行われており増殖力が高いと推測できます。

HBe抗体が陽性の場合は、ウイルス鎮静化されており増殖力が低下してると推測できます。

HBc抗体は感染後長期間陽性を示しますが、抗体価によって臨床的意義が異なります。抗体価が高い場合は、現在の感染、低い場合には過去の感染を意味します。感染したときは多くて、次第に減っていくという感じですね。また、HBs抗体がワクチン接種の影響を受けて陽性になる(HBs抗原に相当する部分を培養して使ってるため)のに対し、HBc抗体はワクチンの影響を受けません。そのため、ワクチン接種の有無で用いる検査も異なるものだと思います。

ただ、HBc抗体半定量・定量だけでの急性肝炎診断は難しくHBc-IgM抗体の測定を用いて鑑別診断を行うようです。

HBc抗原とはHBs抗原に覆われているため、通常は検出できませんが、HBV感染による肝細胞の破壊が起こると、HBc抗原が多量に血中へ放出されます。工場崩壊して部品が流れ出てしまうんです。それに対してHBc抗体が産生されると考えられ、その中でもIgM型のHBc抗体は発症後2〜3ヶ月ほど陽性になるため、急性肝炎の診断が可能とされています。

HBV核酸定量はHBV–DNA量を測るものなので、感染力のあるウイルス量を測れます。

一般的なものであれば、このような検査で診断が可能となります。

しかしながら、病気というものは単純ではありません。ウイルスが変異した場合、この秩序は崩されるのです。その可能性がある場合は、適宜必要な検査を併用して鑑別診断を行わなければなりません。

疑い病名の解釈

疑い病名と言っても限りなく確定に近い疑い病名というものも隠れていたりするんですね。

どういうことかというと、B型肝炎なのは確定しているんだけど、まだ急性か慢性かは確定していないし、その診断がつくまでは疑い病名にしておこう、型の診断がつくまで確定病名をつけるのは待とう、そういう考えの先生もいます。

審査では一応そこも配慮してくれる先生がいたり、B型肝炎なのが分かってるんだったらとりあえず確定病名がないと認めないという先生がいます。

疑い病名で検査が認められたり、確定病名でないと認められなかったりしますよね。そういうとこでも差が出たりします。

もちろん、疑い病名に対してそこまでの定量検査は過剰なんじゃないの?っていう種類の検査があります。

精密検査のあたりは、ウイルスの有無が確認されているような患者に追加で検査していくイメージですから、疑い病名患者に対して行うのは過剰だという判断もあります。

初診時においてはその精密検査も鑑別診断の意味を込めて多項目検査を認めるという考えもあるため、算定が一概にできないとも否定できませんが…。

こあざらし
連月疑い病名で行う場合は何らかの必要性がレセプトから読み取れないと査定されてしまうこともあるかもしれません。

B型肝炎とは言ってもタイプは様々

医療事務員の多くがB型肝炎ウイルス検査のレセプト算定を苦手としているのではないでしょうか。

とりあえず、B型肝炎の病名をレセプトに入れるしかない。後は神頼み。査定されればそこまでだし、正直、運任せ。

確かに医学的見解は私たちのような一般人には推測できない世界が広がってますから、対応が難しいものではあります。

しかしながら、少し知識を取り入れたら、見えてくる矛盾点もあると思います。そう言ったものを拾うだけでもだいぶ変わってくるのではないでしょうか。

単にB型肝炎といえど、初期なのか慢性期なのか、それとも急性増悪なのか?ウイルスの型だって実はB型の中だけでもたくさんあります。その型を調べるジェノタイプ検査もありますよね。

こあざらし
B型肝炎という病名から様々なものが連想できるように心構えを持っておいた方がいいと思います。

多項目算定するという事例は多いでしょう。全員に同じ算定をするものではなく、患者ごとで判断しなければならないものなんです。

意識したいことの例

  • ワクチンの接種歴がある人か?
  • 初期感染の患者なのか?
  • 一過性感染なのか持続感染(キャリア)なのか?
  • 経過観察の患者なのか?
  • 急性期、慢性期の鑑別診断なのか?
  • 他検査よりウイルス変異が疑われる患者なのか?
  • 単にB型肝炎の確定診断をつけるための検査なのか?
  • 薬剤を決めるための検査なのか?
  • 使用薬剤の変更を考えての検査なのか?
  • 治療効果判定のための検査なのか?    など

それぞれの場合において、必要な検査の組み合わせは細かく異なります。単独の検査数値では診断できないものもあり、鑑別(疑いを否定するため)のために併用する検査も多いです。検査の臨床的意義を把握して、組み合わせて診断します。

肝炎の診断とは多岐に渡るものであり、また、主治医の治療方針、症例ごとに細かく異なるものであるため、算定は病院それぞれ異なります。

まとめて初診時に検査してしまう方針だとか、検査結果を見てから精密検査に移行していくとかやり方は様々です。

専門病院であればいきなりまとめて精密検査をしていても認める傾向であったり、診療所など専門病院ではない医療機関では順を追った検査算定を求められていたり。

こあざらし
審査では治療方針、検査の類似性、算定間隔、診療所あるいは総合病院なのか専門病院なのかといった部分が意識されると思いますので、臨床的意義とB型肝炎治療ガイドライン(日本肝臓学会)などを組み合わせて個々検討してください。
  • この記事を書いた人

こあざらし

医療事務(診療所・病院)、レセプト審査(保険者)、医科歯科事務経験、介護事務経験あり。ブログは、査定事例の解釈・レセプト実務に必要な知識を重点的に更新♪

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