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レセプトで不規則抗体の算定が査定になる理由
こんにちは、こあざらし(@ko_azarashi)です。
今回は不規則抗体の算定についてまとめたいと思います。
不規則抗体とは
通常、赤血球抗原(A抗原・B抗原)に対して抗体が産生されますが、この抗体を規則抗体と呼んでいます。
しかしながら稀に、これらとは異なる別の抗体が産生される場合があり、それらの抗体のことを不規則抗体と呼んでいます。自分の赤血球抗原以外に接触することとなる輸血や妊娠で産生されてしまう可能性がある抗体です。
この抗体が産生されてしまうと、自己血液に対して免疫反応が働いてしまうため、早急な対処が必要となります。
不規則抗体加算(50輸血時の加算)の算定が査定になる理由
50番の項目で算定を行う不規則抗体加算のお話をまずしようと思います。
50番で算定する不規則抗体の特徴ですが、これは、輸血がある場合に算定を行う点数となります。
血小板製剤のみ
不規則抗体は赤血球に対する抗体を調べる検査であるため、血小板製剤への検査は保険請求上過剰とみなされて査定になることがあるようです。
単位数が多いものに関して(10単位を超える製剤の時)は保険請求を認めているという審査自治体もあります。(事故防止)
頻回に輸血を行う場合
注6 不規則抗体検査の費用として検査回数にかかわらず1月につき197点を所定点数に加算する。ただし、頻回に輸血を行う場合にあっては、1週間に1回に限り、197点を所定点数に加算する。
通知(17) 「注6」の頻回に輸血を行う場合とは、週1回以上、当該月で3週以上にわたり行われるものである。
複数回算定には要件があります。当該月に3回未満であるレセプトは対象外となる可能性が高いです。
週1回以上、当該月で3週以上ということは、レセプトで見た時に3回以上の輸血があるという判断。
頻回に輸血を行なっている患者が対象となっており、それに満たない患者であれば複数回の不規則抗体加算は過剰とみなされ、査定対象となります。
輸血なし
算定要件となっていますが、輸血患者が対象となっているので、輸血患者以外にこちらの算定はできないと解釈しておきましょう。
自己血貯血のみで輸血なし
輸血実施とともに算定出来る加算となっていますので、貯血だけでは算定対象となりませんので注意しましょう。
自己血輸血
自分の血液での輸血であるため、特殊な症例を持つ患者を除き、通常、不規則抗体の算定はしない方向で審査されているようです。
入院外来それぞれで算定
レセプトが分かれてしまうのでうっかりしてしまう部分ですが、頻回な輸血実施患者に該当しなければ複数回の算定はできません。
術中術後自己血回収術のみ
一見すると輸血のようですが、術中術後自己血回収術は輸血の取扱いではありません。そのため、輸血がない患者に対しての算定とみなされますので査定対象となります。
不規則抗体(60手術日に検査)の算定が査定になる理由
通知(2) 「4」の不規則抗体は、輸血歴又は妊娠歴のある患者に対し、第2章第10 部手術第7款の各区分に掲げる胸部手術、同部第8款の各区分に掲げる心・脈管手術、同部第9款の各区分に掲げる腹部手術又は区分番号「K877」子宮全摘術、「K879」子宮悪性腫瘍手術、「K889」子宮附属器悪性腫瘍手術(両側)、「K898」帝王切開術又は「K912」異所性妊娠手術が行われた場合に、手術の当日に算定する。
また、手術に際して輸血が行われた場合は、本検査又は区分番号「K920」輸血の「注6」に定める不規則抗体検査加算のいずれかを算定する。
この場合、診療報酬明細書の摘要欄に輸血歴がある患者又は妊娠歴がある患者のいずれに該当するかを記載する。
次に、手術日に60番項目で算定する不規則抗体検査のお話をしようと思います。
60番の不規則抗体159点の算定ですが、これを算定できるのは通知にあるように手術が行われた日に手術と併算定する形となります。
輸血歴や妊娠歴なし
輸血歴や妊娠歴がない場合、算定対象となりませんので査定となります。
病名あるいはコメントにてどちらかの既往が分かるようにレセプト請求を行いましょう。
輸血歴や妊娠歴があっても手術なし
輸血歴や妊娠歴があっても、手術の施行がない場合は査定対象となります。あくまでも手術時の検査で算定が認められているものです。
ただし、Rh不適合妊娠などは手術時でなくとも認められるケースあり。
該当手術以外での実施
手術がある場合であっても対象術式以外の術での実施の場合、査定対象となることがあります。(吸引娩出術など)
不規則抗体加算と不規則抗体の算定使い分け
2つの違いってなんとなく分かりましたでしょうか?
50番の加算→輸血実施患者
60番の検査→輸血歴か妊娠歴がある患者で、手術実施患者
簡単に条件だけ並べてみると、以上のようになります。
圧倒的に197点である50番を優先して算定することが多いのではないかと思います。
輸血さえあれば、60番の検査159点として請求する必要性や機会ってないのでは…と思ってしまいますね。
ですが、二つの大きな違いは、まさに加算なのか検査なのかというところです。
ここに注目してみると、算定すべき点数が判断できます。
輸血のみ実施患者はもちろん50番の不規則抗体加算で算定すべきです。
そして、手術実施患者で条件を満たしている患者は、50番の加算と60番の検査で自己判断する必要がありますね。
60番で算定したほうがいい場合とは、出来高レセプトであり、かつ、免疫学的検査が他に実施がないパターンです。
医療機関にとっては加算を算定するよりも高い点数を算定することができるのです。
検査で算定する良さは、免疫学的検査判断料144点の算定ができるという点。
ただし、輸血の反復性がみられる疾患である場合は長い期間に視点を置いて判断しなければなりません。
頻回輸血と判断される場合には、週1回の不規則抗体加算の算定が可能となりますので、その場合は50番の加算を3回以上算定できるほうが高い点数になります。
どちらが高い点数となるかを請求時に見極める必要があります。
さいごに
今日は不規則抗体のレセプト請求についてまとめてみました。
漠然と読み流していると、なんだか理解に苦しむ項目でしたが、向き合ってみると算定すべき方向性が見えてきますね。
輸血患者ではよく見る項目なので学習必須の項目です。