本ページには広告を含むリンクがあります。
自己血輸血と希釈式自己血輸血の違い。レセプトで併算定は可能か?
こんにちは、こあざらし(@ko_azarashi)です。
輸血って、ただでさえ少し苦手な意識を持ってしまいますよね。何というか、レセプトがごちゃごちゃしてるように見えて…。
今回は、少し勘違いが起きやすい自己血輸血と希釈式自己血輸血の算定解釈について書きたいと思います。
自己血輸血
手術数週間前から貯血を行い、手術時及び手術後3日以内に返血を行うものです。
- 自己血貯血は、当該保険医療機関において手術を予定している患者から採血を行い、当該血液を保存した場合に算定する。
- 自己血輸血は、当該保険医療機関において手術を行う際に予め貯血しておいた自己血(自己血貯血)を輸血した場合において、手術時及び手術後3日以内に輸血を行ったときに算定できる。
- 自己血輸血を算定する単位としての血液量は、採血を行った量ではなく、手術開始後に実際に輸血を行った1日当たりの量である。なお、使用しなかった自己血については、算定できない。
輸血の通知より
貯血量と輸血量は必ずしも一致しませんが、輸血量が貯血量を超える請求は不可です。貯血量以内であれば、必ずしも全ての血液を返血算定する必要はありません。ちょっとわかりにくいでしょうか。
●4月1日に手術予定●
2月400mL貯血 3月400mL貯血
合計800mLを事前に貯血
こんな患者がいたとします。
●4月1日手術時の輸血算定●
1)もしも400mL輸血する場合 ○
2)もしも800mL輸血する場合 ○
3)もしも900mL輸血する場合 × 100mL査定対象
基本的に自己血貯血をする場合、1回に採取できる血液は400mLです。なのでそれ以上の血液が必要となる大手術を予定している場合は、早いうちに400mLずつを何回かに分けて貯血して手術に臨みます。人工股関節置換術の場合や心臓手術などは出血量が多くなることが予想されるため、予め多めに輸血用の血液を貯血している症例を見かけます。
800mLを貯血している患者であれば800mLまで輸血算定可能です。当然ですが。
出血量が少なくて済み、全部を返血する必要がなくなり400mLのみ輸血を行った場合も算定可能です。貯血量は過量となっていますが、返戻などの必要はありません。そのまま請求可能です。
ただ、貯血量を超えた輸血量の請求を行うと、貯血していた容量分を差し引き、過量請求されている輸血料が査定となります。なので、自己血輸血を算定する際には必ず過去にどれほどの貯血が算定されているかを確認するようにしてください。
希釈式自己血輸血
- 希釈式自己血輸血は、当該保険医療機関において手術を行う際、麻酔導入後から執刀までの間に自己血の採血を行った後に、採血量に見合った量の代用血漿の輸液を行い、手術時予め採血しておいた自己血を輸血した場合に算定できる。
- 希釈式自己血輸血を算定する単位としての血液量は、採血を行った量ではなく、手術開始後に実際に輸血を行った1日当たりの量である。なお、使用しなかった自己血については、算定できない。
輸血の通知より
希釈式自己血輸血の算定は採血した血液の量ではなく、患者に返血した血液の量を算定します。
この輸血法の利点は、新鮮な血を使うことができるということ、そして、手術の前に予め貯血をしなくていいということ、自分の血を返血するので輸血感染症の心配も少ないというところでしょうか。
麻酔をかけてから手術が始まるまでの間に自分の血と同じ量の輸液との入れ替えを行うといったものですね。こうすることによって、体内の血液が薄まり、出血したとしても実際の血液よりもうすーい成分なので希釈しなかった場合と比べると血液成分の出血量が少なくなるという仕組みなようです。
レセプト請求を見てみると、自己血輸血、希釈式自己血輸血、保存血輸血の併算定をするという症例もあります。書面上で点検をしていると、「あれ?なんか自己血輸血2つかぶってる?」と感じちゃうんですが…。
自己血という名称は共通ですが、実際に行われている手技の内容を考えると全く別のものなのですね。手術に向けて予め何週間も前から段階的に血液を貯血しておく自己血輸血、術当日に麻酔導入後から執刀までの間に貯血を行い手術時に返血を行う希釈式自己血輸血。
まとめ
- 自己血輸血とは、手術数週間前から貯血を行い、手術時及び手術後3日以内に返血を行うものです。算定は貯血手技と輸血手技の算定が出来ます。
- 希釈式自己血輸血とは、術当日に麻酔導入後から執刀までの間に貯血を行い手術時に返血を行うものです。輸血した手技料のみ算定が出来ます。
全く異なる輸血法であるため、併算定可能なものです。