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レセプトで椎弓・椎間手術が査定になる理由と算定方法まとめ
こんにちは、こあざらし(@ko_azarashi)です。
通知の部分が少し複雑で、情報が少ない椎弓と椎間手術の算定解釈について補強したいと思います。
椎弓・椎間手術の算定方法
椎弓・椎間の手術を色んなパターンで算定例を作ってみました。
この基礎があれば、算定の苦手意識はなくなると思います。
注1 椎間又は椎弓が併せて2以上の場合は、1椎間又は1椎弓を追加するごとに、追加した当該椎間又は当該椎弓に実施した手術のうち主たる手術の所定点数の100分の50に相当する点数を加算する。ただし、加算は椎間又は椎弓を併せて4を超えないものとする。
この通知を元に算定していきます。
椎弓手術の算定方法
3椎弓の点数=(所定点数)×1椎弓+(所定点数の50%逓減)×2椎弓となります。
椎弓切除の場合
13310+(13310÷2)×2椎弓=26620点(3椎弓分)
椎弓形成の場合
24260+(24260÷2)×2椎弓=48520点(3椎弓分)
このように、2椎弓目以降は50%逓減した加算として算定を追加して行くようになります。
加算が4椎弓まで可能なので、主たる点数を合わせて最大で5椎弓までの算定しか出来ません。
椎間の算定方法
3椎間の点数=(所定点数)×1椎間+(所定点数の50%逓減)×2椎間となります。
前方椎体固定の場合
37240+(37240÷2)×2椎間=74480
後方又は後側方固定の場合
32890+(32890÷2)×2椎間=65780
後方椎体固定の場合
41160+(41160÷2)×2椎間=82320
前方後方同時固定の場合
66590+(66590÷2)×2椎間=133180
このように、2椎間目以降は50%逓減した加算として算定を追加して行くようになります。
加算が4椎間まで可能なので、主たる点数を合わせて最大で5椎間までの算定しか出来ません。
2種類の椎弓・椎間手術の算定方法
先ほどまでは、椎弓手術だけで複数の椎弓、椎間手術だけで複数の椎間という手術についてをまとめました。
今度は、椎弓手術と椎間手術の両方を行った場合の算定パターンです。
同一術野
同一術野での算定を様々なパターンに分けて算定例を挙げていきたいと思います。
- 椎弓切除(1椎弓)と椎弓形成(1椎弓)
- 椎弓切除(2椎弓)と椎弓形成(2椎弓)
- 後方椎体固定(1椎間)と後方又は後側方固定(1椎間)
- 後方椎体固定(3椎間)と椎弓切除(3椎弓)
椎弓切除(1椎弓)と椎弓形成(1椎弓)
椎弓形成の方が点数が高いので、24260点を主たる点数とします。
主たる点数については100%の点数で請求することが出来ますが、2椎弓目以降は手術を異にしたとしても解釈は同じで、50%逓減にて加算点数として取り扱います。
24260+(13310÷2)=30915点
椎弓切除(2椎弓)と椎弓形成(2椎弓)
椎弓形成の方が点数が高いので、24260点を主たる点数とします。
主たる点数については100%の点数で請求することが出来ますが、2椎弓目以降は、同じ手術であっても、別の手術であっても50%逓減にて加算点数として取り扱います。
24260+(24260÷2)+(13310÷2)×2椎弓=49700点
種類が同じ手術でも異なる手術でも2椎弓目以降は区別することなく50%逓減となっていますね。
後方椎体固定(1椎間)と後方又は後側方固定(1椎間)
後方椎体固定の方が点数が高いので、41160点を主たる点数とします。
主たる点数については100%の点数で請求することが出来ますが、2椎間目以降は手術を異にしたとしても解釈は同じで、50%逓減にて加算点数として取り扱います。
41160+(32890÷2)=57605点
後方椎体固定(2椎間)と後方又は後側方固定(2椎間)
後方椎体固定の方が点数が高いので、41160点を主たる点数とします。
主たる点数については100%の点数で請求することが出来ますが、2椎間目以降は、同じ手術であっても、別の手術であっても50%逓減にて加算点数として取り扱います。
41160+(41160÷2)+(32890÷2)×2椎間=94630点
種類が同じ手術でも異なる手術でも2椎間目以降は区別することなく50%逓減となっていますね。
後方椎体固定(1椎間)と椎弓切除(1椎弓)
1椎間と1椎弓が混在する算定はどうなるのかですが、ここまで来ると解釈の仕方はおおよそ理解出来てると思います。
まずは、後方椎体固定の方が点数が高いので、41160点を主たる点数とします。
主たる点数については100%の点数で請求することが出来ますが、1椎弓も1椎間も隔てなく数えて、2番目以降の手術は50%逓減加算点数として取り扱います。
41160+(13310÷2)=47815点
後方椎体固定(3椎間)と椎弓切除(3椎弓)
後方椎体固定の方が点数が高いので、41160点を主たる点数とします。
主たる点数については100%の点数で請求することが出来ますが、1椎弓も1椎間も隔てなく数えて、2番目以降の手術は50%逓減加算点数として取り扱います。
41160+(41160÷2)×2椎間+(13310÷2)×2椎弓=95630点
同一術野以外
頸部と腰部といったように全く離れた別部位であればそれぞれ主たる所定点数の算定が可能と解されます。
同日実施のものは離れた場所でも加算で取扱うと解釈する地域もあるようですが、離れた場所ならどちらも所定点数での請求が可能と考えるやり方が主流となっています。
皮切が異なればそれぞれに別手術として算定可能と思われますが、中には、腰部周辺で皮切を分けて行った場合など、近接する部位に関しては同一術野と同じ取扱いとされ、査定になるケースがあるため注意が必要です。
隣接する椎弓切除
注2 2から4までに掲げる手術の所定点数には、注1の規定にかかわらず、当該手術を実施した椎間に隣接する椎弓に係る5及び6に掲げる手術の所定点数が含まれる。
通知(1) 「2」後方又は後側方固定から「4」前方後方同時固定までの各区分に掲げる手術の費用には、当該手術を実施した椎間に隣接する椎弓に係る「5」椎弓切除及び「6」椎弓形成の費用が含まれる。
例1 第10 胸椎から第12 胸椎までの後方固定及び第11 胸椎の椎弓切除を実施した場合の算定例
下記ア及びイを合算した点数を算定する。
ア 「2」後方又は後側方固定の所定点数
イ 「2」後方又は後側方固定の所定点数の100 分の50 に相当する点数
ウ 「5」椎弓切除の所定点数の100 分の50 に相当する点数
例2 第10 胸椎から第12 胸椎までの後方固定及び第9胸椎の椎弓切除を実施した場合の算定例
下記のア、イ及びウを合算した点数を算定する。
ア 「2」後方又は後側方固定の所定点数
イ 「2」後方又は後側方固定の所定点数の100 分の50 に相当する点数
ウ 「5」椎弓切除の所定点数の100 分の50 に相当する点数
つまり、椎間手術している範囲に隣り合っている椎弓切除は同一術野の手術となるので50%逓減で算定し、椎間手術を行っている範囲内の椎弓切除であれば切除の費用は椎間手術の中に含まれるということです。
【こあざらしオリジナル事例1】
C3 椎弓切除
C4-C5 後方椎体固定
隣接する椎弓切除は50%逓減する形で算定が出来ます。
【こあざらしオリジナル事例2】
C3 椎弓切除
C3-C5 後方椎体固定
椎弓切除は後方椎体固定が行われている椎間の椎弓であるため、算定できません。
通知に書いてある通り、このような場合では椎弓切除の費用は椎間手術の所定点数に含まれるということになります。
複数手術の特例
平成30年度改定にて、組み合わせが追加となっています。
複数手術の特例一覧に組み合わせのあるものでしたら、従たる手術を50%逓減することにより請求が可能となっています。
椎弓・椎間手術2回法の算定は可能か?
椎弓・椎間手術で、疾患の状態によっては前方固定と後方固定を併用しなければならない時があります。
そういった場合、手術の体位も変わりますし、手術の侵襲度を考えて異日に行われることが多いです。
2回法の実施には大体1週間くらいあけて行っているものが多いですが、この間隔が、手術の翌日に2回目の手術を行っているといった場合は一連とみなされ、手術手技料が査定されることがあります。
疾患の状態や審査医師の判断で異なるとは思いますが、2回法の算定はおおよそ認められています。
再発による再手術の場合は、創傷処理などに査定となる場合があります。
椎弓・椎間手術が査定になる理由
算定方法を学習したので、次は査定事例について分析していきたいと思います。
同一の椎弓に対する手術
複数手術の特例一覧に載ってるのに、なぜか査定になるという事態に遭遇したことはないでしょうか。
実は落とし穴があるようです。
同一術野とは同一視野における手術であり、全く同じ箇所に対する手術という意味ではありません。周辺含む同じ皮切での手術として考えられているのではないかと思います。(算定時の解釈)
そして、同一の椎弓に対する手術についてですが、これは主たる手術の点数しか算定出来ません。
高位が違う場合は2つ以上の手術が算定可能で、高位が同じ場合はいくら特例一覧にあるものでも併算定出来ないと解されている審査があるようです。
病名部位より椎弓・椎間数予測
例えば、腰椎椎間板ヘルニアといった疾患などで行う複数手術では、手術部位によって査定となることが稀にあります。
L4-L5が特に多い疾患として知られており、このことから手術部位の記載がなくても、同じ椎弓に対する手術だと判断され査定となってしまうケースがあるようです。
椎間板摘出術と同じ椎体や椎弓なら算定不可となり、隣接する椎弓切除であれば手術算定は可能と解するものです。
他に疾患があり、別部位への手術だと判断できるレセプトであれば、査定になることはないと思います。
もし他に疾患がレセプトにないようでしたら、複数手術の算定は目をつけられる可能性があるため、手術部位の記載をすることオススメします。
同一椎弓への手術ではないと判断されるとルール通り算定可能となる考えですので。
固定材料のない椎弓形成
人工骨や自家骨など椎弓形成をするための固定材料の請求が見られない場合、椎弓形成が認められず、椎弓切除として振り替え査定されることがあります。
請求材料に形成材料が上がらないパターンで手術をされる場合には、手術内容の詳記をつけていただいた方がいいと思います。
材料がない場合、形成術とみなされない審査がありますので、材料の有無を確認していただき、材料と思しきものが無ければ形成術である証明を何らかの形で強くアピールした方が査定防止になります。
椎体固定材料なしでの椎体固定
人工骨椎体固定用、腸骨などの算定が見られない場合、椎体固定ではなく別の術に振り替え査定となる場合があります。
詳記との整合性
詳記に書いてある術式と実際にレセプトで請求を行なっている術式に相違がある場合、もちろん査定対象となってしまいます。
多椎弓・多椎間の加算上限超え
注1 椎間又は椎弓が併せて2以上の場合は、1椎間又は1椎弓を追加するごとに、追加した当該椎間又は当該椎弓に実施した手術のうち主たる手術の所定点数の100分の50に相当する点数を加算する。ただし、加算は椎間又は椎弓を併せて4を超えないものとする。
算定方法の時にも書きましたが、加算の上限を超えて算定することは出来ません。
複数種類の手術で多椎弓・多椎間の加算を算定する場合にうっかりそれぞれで上限まで算定してしまうことがあるようです。
さいごに
今回は、椎弓・椎間手術の算定解釈についてまとめてみました。
分析が大変でしたが、算定に困ってる方の参考になるように細かくパターン分けしたつもりです。