レセプトで全身麻酔・静脈麻酔の算定が査定になる理由

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こんにちは、こあざらし(@ko_azarashi)です。

レセプト点検をする際に、実務症例でありそうなパターンを解説。今日のテーマは麻酔の手技料についてです。

にゃこ
大変!全身麻酔の手技料がまるまる査定されちゃった!麻酔って病名が必要なの??
こあざらし
病名が必要な場合もあるけど、今回の査定はそうじゃないみたいだよ。
にゃこ
病名以外の理由?
こあざらし
これは通知を確認してみたほうが良さそうだね。

目次

麻酔用薬剤の有無

L001-2 静脈麻酔
通知(1)
静脈麻酔とは、静脈注射用麻酔剤を用いた全身麻酔であり、意識消失を伴うものをいう。
    (一部抜粋)

L008 マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔
通知(2)
静脈注射用麻酔剤を用いて全身麻酔を実施した場合であって、マスク又は気管内挿管による酸素吸入又は酸素・亜酸化窒素混合ガス吸入と併用する場合は、20 分以上実施した場合は、本区分により算定する。
    (一部抜粋)

通知を確認してみると、静脈注射用麻酔剤を用いて全身麻酔を実施した場合が大前提となっています。つまり、この薬剤の使用がなければこの点数の算定は認められません。

もし、全身麻酔や静脈麻酔を算定する場合は、薬効分類番号でいう[111]に属する全身麻酔剤があるかの確認をして下さい。

この薬がないだけで、麻酔の手技料は全査定されてしまいます。

麻酔が困難な患者

麻酔が困難な患者に対しては加算を算定できるようになっています。

こあざらし
通知を一通り確認してみましょう。

通知(4) 麻酔が困難な患者とは、以下に掲げるものをいい、麻酔前の状態により評価する。

ア 心不全(NYHAⅢ度以上のものに限る。)の患者
イ 狭心症(CCS 分類Ⅲ度以上のものに限る。)の患者
ウ 心筋梗塞(発症後3月以内のものに限る。)の患者
エ 大動脈閉鎖不全、僧帽弁閉鎖不全又は三尖弁閉鎖不全(いずれも中等度以上のものに限る。)の患者
オ 大動脈弁狭窄(経大動脈弁血流速度4m/秒以上、大動脈弁平均圧較差40mmHg 以上又は大動脈弁口面積1 ㎠以下のものに限る。)又は僧帽弁狭窄(僧帽弁口面積1.5 ㎠以下のものに限る。)の患者
カ 植込型ペースメーカー又は植込型除細動器を使用している患者
キ 先天性心疾患(心臓カテーテル検査により平均肺動脈圧25mmHg 以上であるもの又は、心臓超音波検査によりそれに相当する肺高血圧が診断されているものに限る。)の患者
ク 肺動脈性肺高血圧症(心臓カテーテル検査により平均肺動脈圧25mmHg 以上であるもの又は、心臓超音波検査によりそれに相当する肺高血圧が診断されているものに限る。)の患者
ケ 呼吸不全(動脈血酸素分圧60mmHg 未満又は動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比300未満のものに限る。)の患者
コ 換気障害(1秒率70%未満かつ肺活量比70%未満のものに限る。)の患者
サ 気管支喘息(治療が行われているにもかかわらず、中発作以上の発作を繰り返すものに限る。)の患者
シ 糖尿病(HbA1c がJDS 値で8.0%以上(NGSP 値で8.4%以上)、空腹時血糖160mg/dL以上又は食後2時間血糖220mg/dL 以上のものに限る。)の患者
ス 腎不全(血清クレアチニン値4.0mg/dL 以上のものに限る。)の患者
セ 肝不全(Child-Pugh 分類B 以上のものに限る。)の患者
ソ 貧血(Hb6.0g/dL 未満のものに限る。)の患者
タ 血液凝固能低下(PT-INR2.0 以上のものに限る。)の患者
チ DIC の患者
ツ 血小板減少(血小板5万/uL 未満のものに限る。)の患者
テ 敗血症(SIRS を伴うものに限る。)の患者
ト ショック状態(収縮期血圧90mmHg 未満のものに限る。)の患者
ナ 完全脊髄損傷(第5胸椎より高位のものに限る。)の患者
ニ 心肺補助を行っている患者
ヌ 人工呼吸を行っている患者
ネ 透析を行っている患者
ノ 大動脈内バルーンパンピングを行っている患者
ハ BMI35 以上の患者

通知にありますが、ア〜ハの項目に該当する患者に対して算定するものです。ただし、単に病名がつけば良いというわけではありません。中には、重症度の規定があるものがありますので、それに当てはまる患者かが重要です。いくら病名がついても、数値を満たしていない場合は該当となりません。また、困難な患者として加算を算定する場合は、その困難病名の記載が必要です。病名記載漏れがあると、査定の恐れがありますのでご注意ください。

精神科電気痙攣療法と同日の算定

精神科電気痙攣療法の通知を見てみましょう。

通知(3) マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔を伴った精神科電気痙攣療法を実施する場合は、当該麻酔に要する費用は所定点数に含まれ、別に算定できない。ただし、当該麻酔に伴う薬剤料及び特定保険医療材料料は別途算定できる。   (一部抜粋)

薬剤や材料は別途算定可能ですが、全身麻酔の手技料は算定できないという通知です。

こあざらし
同日に全身麻酔の算定があると査定となってしまいます。

麻酔の手技料が2種類ある

例えば、同日に全身麻酔4と全身麻酔5などを併算定する場合。各々個々の独立した点数で請求しないように気をつけてください。必ず、合算した点数で請求を行うように。各々で算定してしまうと、手技料を2回カウントしていることになり、過剰な請求となります。

余談ですが、硬膜外麻酔併施加算を算定する場合は全身麻酔の時間を超えると、超過分は査定となります。

再手術での同日2回の全身麻酔算定

一度全身麻酔離脱後であれば、再度全身麻酔の手技料が算定出来ます。一度病棟帰室後の再度全身麻酔ということであれば、それぞれで算定可能な手技と考えられます。あまりにも再手術までの時間が近すぎると麻酔の手技料が一連とみなされるかもしれませんが…。算定時には摘要や詳記をつけることを推奨します。

再手術なく全身麻酔を同日2回算定されていると、請求ミスと判断されて過剰分の1回は全査定となりますのでご注意ください。

さいごに

このような部分を気をつけて点検しておくと、未然に査定を防げるかもしれません。高額な点数ですのでなるべく査定は避けたいものです。最終的には審査自治体判断になる部分が多く、審査に差異があるかもしれないですが。少しでも参考になればと思います。

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この記事を書いた人

医療事務(診療所・病院)、レセプト審査(保険者)、医科歯科事務経験、介護事務経験あり。ブログは、査定事例の解釈・レセプト実務に必要な知識を重点的に更新♪

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