レセプトで輸血前後検査の算定が査定される理由

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こんにちは、こあざらし(@ko_azarashi)です。

今日は、医科点数表の検査についてお話しようと思います。

にゃこ
輸血の時って前後に検査をするけど、スクリーニングだからセット検査で行うよね。どうしてだか分からないけど全部が査定されるとかじゃなくて一部分だけ査定されたりして、イマイチ理由がはっきりとしないよ。
こあざらし
じゃぁ、今日は輸血前後に行われるスクリーニング検査をテーマにしよう!
目次

輸血前のHIVスクリーニング検査

まずは関連する通知を見てみましょう。HIVに係るものについて通知が出ています。

(通知)
診療録等から非加熱血液凝固因子製剤の投与歴が明らかな者及び診療録等が確認できないため血液凝固因子製剤の投与歴は不明であるが、昭和53年から昭和63年の間に入院し、かつ、次のいずれかに該当する者に対して、「16」のHIV-1抗体、「17」のHIV-1,2抗体定性、同半定量、「18」のHIV-1,2抗体定量、又は「17」のHIV-1,2抗原・抗体同時測定定性若しくは同定量を実施した場合は、HIV感染症を疑わせる自他覚症状の有無に関わらず所定点数を算定する。
ただし、保険医療機関において採血した検体の検査を保健所に委託した場合は、算定しない。
新生児出血症(新生児メレナ、ビタミンK欠乏症等)等の病気で「血が止まりにくい」との指摘を受けた者
肝硬変や劇症肝炎で入院し、出血の著しかった者
食道静脈瘤の破裂、消化器系疾患により大量の吐下血があった者
大量に出血するような手術を受けた者(出産時の大量出血も含む。)
なお、間質性肺炎等後天性免疫不全症候群の疾病と鑑別が難しい疾病が認められる場合やHIVの感染に関連しやすい性感染症が認められる場合、既往がある場合又は疑われる場合でHIV感染症を疑う場合は、本検査を算定できる。

HIV-1抗体、HIV-1,2抗体定性、同半定量、定量、又はHIV-1,2抗原・抗体同時測定定性若しくは同定を実施した場合には、まず、この部分に該当する患者かどうかを確認しておきたいです。

算定対象患者

  • 非加熱血液凝固因子製剤の投与歴があり、輸血の投与歴は不明でも昭和53年から昭和63年の間に入院歴がある人でア~オのいずれかに該当する場合
  • 間質性肺炎等後天性免疫不全症候群の疾病と鑑別が難しい疾病が認められる場合
  • HIVの感染に関連しやすい性感染症が認められる場合
  • 既往がある場合又は疑われる場合でHIV感染症を疑う場合

HIVの感染に関連しやすい性感染症ですが、主に梅毒、クラミジアなどの病名が確定している患者は算定要件を満たす患者と考えられます。

HIVを疑わせる症状があっての検査であれば、病名を記載の上、その旨をレセプトに摘要記載して強調することをお勧めします。

もし通知に該当している患者である場合は、どの要件に該当しているのか摘要記載を入れて審査委員にアピールをするほうがいいと思います。

たとえ、「HIV感染症の疑い」という病名があっても、単なるスクリーニング検査という判断をされれば保険請求対象外として処理されます。基本的に検査の実施はもちろん行われていると思われますが、輸血前と術前検査での実施分については保険請求していないところがほとんどです。

こあざらし
ちなみにエイズ治療の専門病院に指定されている病院であれば、請求は認められる傾向にあるようですね。

輸血後のHIVスクリーニング検査

まずは関連の通知を確認してみましょう。

(通知)
HIV-1抗体及びHIV-1,2抗体定性、同半定量又は同定量、HIV-1,2抗原・抗体同時測定定性又は同定量
区分番号「K920」輸血(「4」の自己血輸血を除く。以下この項において同じ。)を算定した患者又は血漿成分製剤(新鮮液状血漿、新鮮凍結人血漿等)の輸注を行った患者に対して、一連として行われた当該輸血又は輸注の最終日から起算して、概ね2か月後に「16」のHIV-1抗体、「17」のHIV-1,2抗体定性、同半定量、「18」のHIV-1,2抗体定量、又は「17」のHIV-1,2抗原・抗体同時測定定性若しくは同定量の測定が行われた場合は、HIV感染症を疑わせる自他覚症状の有無に関わらず、当該輸血又は輸注につき1回に限り、所定点数を算定できる。
他の保険医療機関において輸血料の算定又は血漿成分製剤の輸注を行った場合であってもアと同様とする。
ア又はイの場合においては、診療報酬明細書の摘要欄に当該輸血又は輸注が行われた最終日を記載する。

この通知から見て分かる通り、輸血後であれば算定できるということが分かりますね。

もちろん他病院での実施でも構いません。対象は輸血実施患者です。

保険算定妥当と思われる検査時期

検査時期については、「輸血療法の実施に関する指針」厚生労働省を参考にします。

 ⅲ  ヒト免疫不全ウイルス感染
 後天性免疫不全症候群(エイズ)の起因ウイルス(HIV)感染では,感染後2~8週で,一部の感染者では抗体の出現に先んじて一過性の感冒様症状が現われることがあるが,多くは無症状に経過して,以後年余にわたり無症候性に経過する。特に供血者がウインドウ期にある場合の感染が問題となる。受血者(患者)の感染の有無を確認するために,医師が感染リスクを考慮し,感染が疑われる場合などには,輸血前にHIV抗体検査を行い,その結果が陰性であれば,輸血後2~3ヶ月以降に抗体検査等を行う必要がある。

「輸血療法の実施に関する指針」-厚生労働省HPより一部抜粋

検査時期としては輸血施行日から起算して概ね2か月以降と通知にありますので、輸血直後の検査というのは査定となるケースが多いです。輸血から数日後~1ケ月前後で実施してしまった検査等の請求は保険対象外となる場合が多いのでご注意ください。

輸血前の肝炎スクリーニング検査

肝炎のスクリーニング検査については、「輸血療法の実施に関する指針」厚生労働省を参考にします。関係ありそうな部分を抜粋してます。

ⅱ  輸血後肝炎
 本症は,早ければ輸血後2~3カ月以内に発症するが,肝炎の臨床症状あるいは肝機能の異常所見を把握できなくても,肝炎ウイルスに感染していることが診断される場合がある。特に供血者がウインドウ期にあることによる感染が問題となる。このような感染の有無を見るとともに,早期治療を図るため,医師が感染リスクを考慮し,感染が疑われる場合などには,別表のとおり,肝炎ウイルス関連マーカーの検査等を行う必要がある。

別表
  輸血前検査 輸血後検査
B型肝炎 HBs抗原 核酸増幅検査(NAT)(輸血前検査の結果がいずれも陰性の場合、輸血の3か月後に実施)
HBs抗体
HBc抗体
C型肝炎 HCV抗体 HCVコア抗原検査 (輸血前検査の結果がいずれも陰性の場合又は感染既往と判断された場合、輸血の1~3か月後に実施)
HCVコア抗原

「輸血療法の実施に関する指針」-厚生労働省HPより一部抜粋編集

輸血前に行われる肝炎スクリーニング検査ですが、縦覧でレセプト審査されます。輸血実施がなかった場合は査定対象となりますので後追いをして算定に疑義が出ないように気をつけましょう。

また、輸血前検査で行った場合、「輸血前検査」と摘要を入れるなどして何のために行われたスクリーニング検査なのか審査側に分かるように請求しましょう。書面上で読み取れない場合は単なる全身スクリーニング検査と判断され、場合によっては過剰請求と考えられてしまいます。

輸血前検査の適応項目

B型肝炎HBs抗原、(HBs抗体・HBc抗体)
C型肝炎HCV抗体、(HCVコア抗原)

輸血前検査として認められているのは、主にHBs抗原とHCV抗体です。既往がある患者であったり、陽性患者である場合はカッコ内の検査を併算定する場合もありますが、既往なく単なる輸血前検査として実施される場合においては肝炎の有無が分かればいいので、カッコ内の検査を併算定するのは過剰と判断されるケースが多いです。

こあざらし
ちなみに、これに該当しない検査を輸血前検査として算定した場合、その検査は査定対象となります。たまに見かけますね。

輸血後の肝炎スクリーニング検査

輸血後の肝炎スクリーニング検査についても、輸血前肝炎検査の項で見た「輸血療法の実施に関する指針」厚生労働省を参考にして判断します。

保険算定妥当と思われる検査時期

B型肝炎検査輸血後3ヶ月
C型肝炎検査輸血後1~3ヶ月

B型肝炎検査とC型肝炎検査では少し差異があります。

B型肝炎については3か月後付近に行われた輸血後肝炎検査についてが保険適応と考えられています。よって、輸血からひと月で行われている輸血後検査は保険請求対象外です。

C型肝炎については1~3か月後付近が保険適応と考えられています。もし1か月後に実施の場合であればB型肝炎とは異なりますのでC型肝炎に対する輸血後検査は保険算定可能です。

また、一年以上経過してから実施の輸血後スクリーニングに関しましては、期間が空いてるということで保険請求が認められない場合があります。

※ただし、時期については輸血後であればという考えもあります。患者の受診ペースに合わせるので多少の前後は仕方がないものです。あくまでも査定にされた時の目安として確認してみてください。

輸血後検査の適応項目

B型肝炎核酸増幅検査(NAT)
C型肝炎HCVコア抗原

これらの検査に相当するのがそれぞれHBV核酸定量とHCVコア蛋白。そして、輸血後検査としての適応があるのはこの2つの検査のみなのでそれ以外のスクリーニング検査の併算定がある場合は査定対象となり得ます。

連月・隔月

1輸血に対して輸血後スクリーニング検査は1回が妥当なのかなぁと考えてます(そうそう何回もしてる人は見かけないので個人的なデータですが)。このような頻度を超える算定があった場合、査定対象となるケースがありますね。もちろん、確定病名や陽性反応が出たのであれば、その旨を記載して請求をすることは可能だと考えられます。

輸血後検査を頻繁に行っている症例については適正回数に減点査定されます。審査委員の裁量によっては審査差異があるため、査定の絶対的な基準はありません。

さいごに

今日はとりあえず輸血前後のスクリーニング検査についてまとめてみました。もし査定になった場合、何かのヒントになればと思います。

検査と言えば、他にも術前検査や内視鏡前検査なども色々算定ルールがありますよね。今後気が向いたらそれについてもまとめてみたいと思います…気が向いたら(笑)検査は重たいですね…(涙)

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この記事を書いた人

医療事務(診療所・病院)、レセプト審査(保険者)、医科歯科事務経験、介護事務経験あり。ブログは、査定事例の解釈・レセプト実務に必要な知識を重点的に更新♪

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