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レセプトでインスリン(IRI)の算定が査定される理由
こんにちは、こあざらし(@ko_azarashi)です。
今日は医科点数表の検査についてお話しようと思います。
糖尿病検査の時に度々算定するインスリン検査についてテーマにしますね。
インスリン(IRI)検査とは?
血中のインスリン濃度を測る検査です。
そもそもインスリンとはいったいどんなものなのか?
食べ物は消化酵素により分解されブドウ糖となったあと血液によってあらゆる臓器や組織に運搬されエネルギーとなります。インスリンは、この時、血液から細胞へブドウ糖を受け渡してくれる役目を担っているホルモンです。
レセプトの請求でIRI検査の実施が多くみられるのは、糖尿病の鑑別診断ですね。
この検査の数値でどんなことがどんなふうに判断されるのか。その原理を少しだけ把握しておきましょう。
主な原因は、自分の抗体が自分の細胞を外敵とみなして攻撃してしまうという自己免疫疾患によるものです。インスリンが出なくなってしまう病気なので、自ずとインスリンの数値は低値となりますね。
膵臓の活動が低下することによりインスリンの分泌量が減る場合(インスリン分泌低下)と、体の組織がインスリンの働きかけに対して反応が鈍くなってしまってる場合(インスリン抵抗性)があります。
インスリン分泌低下はインスリンの数値が低値を示します。逆にインスリン抵抗性ではインスリン分泌が過剰となり増加するため、インスリンの数値が高値を示します。
2型糖尿病の場合は数値が低かったり高かったりする場合があるのです。
余分な糖を肝臓に蓄えたり腎臓で排出したりすることで体内の糖濃度を一定に保っているため、肝機能や腎機能が低下すると糖が血液中に残ってしまいます。それに対して、糖処理を促進させようと、援軍のインスリンが過剰に血中へ放出。結果としてインスリンの数値が高値を示します。
レセプトでIRIの算定が査定される理由
査定対象となる事例のパターンを挙げていきたいと思います。
C-ペプチド(CPR)との同時併算定
C-ペプチドは、インスリンが生成される過程において生まれるものです。インスリン分泌前の状態では、インスリンとC-ペプチドの分子がおおよそ1対1の割合でくっついた状態で存在しプロインスリンと呼ばれています。インスリン分泌時に膵臓から分泌されたのち、インスリンとC-ペプチドに分解されてバラバラになり血液を通り尿に排泄となります。
C-ペプチドの数値を測定する検査は、分子がインスリン数と対になっているため、測定値を判読する場合にインスリンと同じような考え方を用いることとなります。
内因性インスリン分泌を調べるにはCPRの方が有用だとされています。(IRIは、インスリン抗体がある場合やインスリン注射中の場合などでは正しい情報を得られないため)
CPRやIRIの算定を糖尿病確定後において算定することは問題ないとされていますが、「耐糖能異常」や「インスリン異常症」等の糖尿病以外の病名がないレセプトにおいてのCPRとIRIの同日併算定は過剰と判断され査定対象となりますので、病名を確認しながら算定を行うようにしましょう。
(参考:支払基金 審査情報提供事例)
では、「耐糖能異常」や「インスリン異常」などの病名があれば無条件で併算定が可能なのかということですが、それは少し違います。単に病名があればいいという簡単な話ではありません。
他糖尿病関連の多項目検査を行っているようであれば、その組み合わせによっては過剰と考えられ、査定となるケースもあります。何を測定するための検査なのか内容を考察し、検査目的に重複がないように算定を行いましょう。
耐糖能精密と同日併算定
D288 糖負荷試験
通知(1) 負荷の前後に係る血中又は尿中のホルモン等測定に際しては、測定回数、測定間隔等にかかわらず、一連のものとして扱い、当該負荷試験の項により算定するものであり、検体検査実施料における生化学的検査(Ⅰ)又は生化学的検査(Ⅱ)の項では算定できない。
通知(2) 「2」の耐糖能精密検査(常用負荷試験及び血中インスリン測定又は常用負荷試験及び血中C-ペプチド測定を行った場合)は、常用負荷試験及び負荷前後の血中インスリン測定又は血中C-ペプチド測定を行った場合に算定する。
耐糖能精密と同日併算定を行っている場合、IRIやCPRは、通知にもある通り所定点数に含まれる検査ですので別途出来高で算定するのは過剰と考えられます。そのため同日併算定をしている場合のIRIやCPRは査定対象となります。
糖尿病の疑い
糖尿病の疑いがある患者に対して、HbA1c等の検査をせずにいきなりIRI検査を行った場合ですが、検査内容から考えて少し過剰と考えられます。1次検査というよりは2次検査で行う検査のように考えられますので…。
この場合、IRIが査定対象となる場合がありますので、糖尿病以外の診断で別の必要性があったのであれば摘要記載などをつけて請求するように気をつけましょう。
糖尿病確定病名
糖尿病として診断されても、その型別の判断が困難である症例も見受けられる。糖尿病の病態把握、特にインスリン抵抗性を知るために、一定間隔での経過観察が必要な場合もある。
(参考:支払基金 審査情報提供事例)
糖尿病確定したのちもしばらくは病態把握のために経過観察が必要と考えられ、糖尿病確定後においても原則算定が認められるそうです。
ただし、糖尿病の確定病名の診療開始日が何年も前であるなど古い病名である場合は過剰と判断され査定されるケースがありますので、糖尿病の診療開始日は確認したほうがよさそうです。また、経過観察が必要と考えられるのは2型糖尿病の場合ですね。
あと、いくら経過観察といえど、連月や隔月で行うのは過剰という判断をする自治体もあります。
インスリン治療中
インスリン注射を投薬中の患者においては、内分泌の正確なIRIの数値を測ることが出来ないため、保険請求は認められていません。CPRなどの算定は認められています。同月で投与前に行われた検査である場合は、そのことを摘要記載に入れておきましょう。
さいごに
検査って、どんな目的で行われる検査項目なのかってのを突き詰めていくと、保険請求できないと判断されるのも仕方ないなと思われる症例の理由が見えてきますね。単に病名があるから認められるというわけではなく、そういった医学的な部分を勉強していくと査定の勉強になります。