『指に係る同一手術野の範囲』レセプト算定解釈Vol.2(異なる指)

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こんにちは、こあざらし(@ko_azarashi)です。

今回も『指に係る同一手術野の範囲』の通知を解釈していきたいと思います。

こあざらし
今回は、前回の第1部(同じ指に対する手術)に引き続き、第2部(異なる指に対する手術)を規定した通知に触れながら解釈していきましょう。
目次

『イ』の通知を解釈(片手を同一術野とみなす場合)

指に係る同一手術野の範囲と算定方法については次の通りである。
イ デブリードマンその他(イ)、(ロ)及び(ハ)に該当しない手術については、第1指から第5指までを同一手術野として取り扱い、当該手術のうち2以上の手術を複数指に行った場合には、「通則14」における「別に厚生労働大臣が定める場合」に該当する場合を除き、主たる手術の所定点数のみを算定する。

デブリードマン手術(イ)、(ロ)、(ハ)に該当しない手術の場合、また、「通則14」で示す他の規定に該当しなければ、片手を同一術野とみなし、主たる手術の点数のみで算定を行うという内容が示されています。

(イ) 第1指から第5指まで(中手部・中足部若しくは中手骨・中足骨を含む。)のそれぞれを同一手術野とする手術は、次に掲げる手術である。

  • K028 腱鞘切開術(関節鏡下によるものを含む。)
  • K034 腱切離・切除術(関節鏡下によるものを含む。)
  • K035 腱剥離術(関節鏡下によるものを含む。)
  • K037 腱縫合術
  • K038 腱延長術
  • K039 腱移植術(人工腱形成術を含む。)の「1」指(手、足)
  • K040 腱移行術の「1」指(手、足)
  • K040-2 指伸筋腱脱臼観血的整復術
  • K054 骨切り術の「3」中の指(手、足)(関節リウマチの患者に対し、関節温存を前提として中足骨短縮骨切り術を行った場合に限る。)

(ロ) 第1指から第5指まで(中手部・中足部若しくは中手骨・中足骨を含まない。)のそれぞれを同一手術野とする手術は、次に掲げる手術である。ただし、合指症手術にあっては各指間のそれぞれを同一手術野とする。

  • K089 爪甲除去術
  • K100 多指症手術
  • K090 ひょう疽手術
  • K101 合指症手術
  • K091 陥入爪手術
  • K102 巨指症手術
  • K099 指瘢痕拘縮手術
  • K103 屈指症手術斜指症手術
  • 第1節手術料の項で「指(手、足)」と規定されている手術(区分番号「K039」腱移植術(人工腱形成術を含む。)の「1」指(手、足)、区分番号「K040」腱移行術の「1」指(手、足)、区分番号「K045」骨折経皮的鋼線刺入固定術の「3」中の指(手、足)、区分番号「K046」骨折観血的手術の「3」中の指(手、足)、区分番号「K054」骨切り術の「3」中の指(手、足)(関節リウマチの患者に対し、関節温存を前提として中足骨短縮骨切り術を行った場合に限る。)、区分番号「K063」関節脱臼観血的整復術の「3」中の指(手、足)、区分番号「K073」関節内骨折観血的手術の「3」中の指(手、足)、区分番号「K080」関節形成手術の「3」中の指(手、足))及び「K082」人工関節置換術の「3」中の指(手、足)を除く。)

(ハ) 同一指内の骨及び関節(中手部・中足部若しくは中手骨・中足骨を含む。)のそれぞれを同一手術野とする手術は、次に掲げる手術である。

  • 区分番号「K045」骨折経皮的鋼線刺入固定術
  • 区分番号「K046」骨折観血的手術
  • 区分番号「K063」関節脱臼観血的整復術
  • 区分番号「K073」関節内骨折観血的手術
  • 区分番号「K078」観血的関節固定術
  • 区分番号「K080」関節形成手術
  • 区分番号「K082」人工関節置換術
  • 区分番号「K082-3」人工関節再置換術

1)手術の組み合わせ例

中指 骨折非観血的整復術
環指 骨折非観血的整復術

骨折非観血的整復術は、特に指ごとに算定できるという規定はありません。そのため、同時に数本の指に対して非観血的整復術を行った場合でも主たる1回のみと解します。

2)通則14に該当する例

中指 腱切離・切除術(関節鏡下によるものを含む。)
環指 神経縫合術

通則14に該当する例であれば、主たる手術と従たる手術を100分の50として両方請求可能です。

こあざらし
指の通則に該当していなくても、こちらに該当している場合があり得ますので見落とさないように気をつけましょう。

『ウ』の通知を解釈(複数算定可能な手術の項目をまたがる場合)

指に係る同一手術野の範囲と算定方法については次の通りである。
ウ (イ)及び(ロ)に掲げる手術と、(ハ)に掲げる手術を同時に行った場合にあっては、「通則14」における「別に厚生労働大臣が定める場合」に該当する場合を除き、同一指に対して行われたものは主たる手術の点数を算定し、別々の指に対して行われたものはそれぞれ所定の点数を算定する。

(イ)と(ハ)、(ロ)と(ハ)に掲げる手術を同時に行った場合にあっては、「通則14」で示す他の規定に該当しなければ、同じ指に対して行われたものは主たる手術の点数を算定します。

別々の指に対して行われたものはそれぞれ個別に算定が可能と示されています。

手術の組み合わせ例

中指 骨折経皮的鋼線刺入固定術
環指 陥入爪手術

骨折経皮的鋼線刺入固定術は(ハ)の通知に該当する手術であり、陥入爪手術は(ロ)に該当する手術です。異なる指に対して手術を行っているため、この場合は、それぞれの所定点数で算定可能です。

『エ』の通知を解釈(同一術野、別術野で扱う手術が混在する場合)

指に係る同一手術野の範囲と算定方法については次の通りである。
エ 第1指から第5指までを別の手術野として取り扱う手術(同一指内の骨及び関節を別の手術野として取り扱う手術を含む。)と、第1指から第5指までを同一手術野として取り扱う手術を同時に行った場合にあっては、それぞれの手術が別々の指に対して行われたものであっても、「通則14」における「別に厚生労働大臣が定める場合」に該当する場合を除き、主たる手術の所定点数のみを算定する。
ただし、第1指から第5指までを別の手術野として取り扱う手術(同一指内の骨及び関節を別の手術野として取り扱う手術を含む。)を複数指に対し行った場合に、それぞれの点数を合算した点数が、同一手術野として取り扱う手術の点数よりも高くなる場合にあっては、いずれかにより算定する。

(イ)(ロ)(ハ)に掲げられた各々の指ごとに算定可能な手術と同時に片手を同一術野とする手術が併せて行われた場合の取扱いを示したものです。

この場合、それぞれの指ごとで別に行われたとしても、「通則14」で示す他の規定に該当しなければ、片手を同一術野とみなし、主たる手術の点数のみで算定を行うという内容が示されています。片手の中でどれか1つの術式を代表で算定するということです。これは複数指算定可能な術式1本と片手を同一術野とみなす術式1本の同時施行のパターンの取扱いです。

また、複数指算定可能な術式を2本以上と片手を同一術野とみなす術式1本の同時施行について取扱いが明確化されています。

(イ)(ロ)(ハ)に掲げられた各々の指ごとに算定可能な手術の中から複数の指に対して行われたものの合計点数が、片手を同一術野として算定する手術の点数よりも高くなる場合にあっては、同一術野の点数を算定しない形で複数指ごとの算定を優先して複数指の算定可能だと解釈が出来ます。

つまり、複数算定可能な手術のみで算定した合計点数と同一術野として1つの手術として算定した点数の二つを比べたみたとき、点数が高いほうを選んで算定していいよということです。

こあざらし
どっちかに統一できる、それを請求する側が選択できるということ。

手術の組み合わせ例(指ごと可能1指と片手を同一術野とする1指)

中指 腱切離・切除術 4,290点
小指 皮膚悪性腫瘍切除術 11,000点

医学的にあるかどうかは何も考えず、算定解釈のために術式を並べてみてます。

腱切離・切除術は複数指にて算定が可能な点数になっています。

皮膚悪性腫瘍切除術は、特に複数指算定での対象術式として指定がないため、片手を同一術野とみなす手術です。

こあざらし
たとえ指が異なる場合でも、指ごとでの算定が可能な点数と片手を同一術野とみなす手術を同時に行った場合は、主たる手術の算定となるため、皮膚悪性腫瘍切除術のみ請求します。

手術の組み合わせ例(指ごと可能3指と片手を同一術野とする1指)

母指 腱切離・切除術 4,290点
中指 腱切離・切除術 4,290点
環指 腱切離・切除術 4,290点
小指 皮膚悪性腫瘍切除術 11,000点

医学的にあるかどうかは何も考えず、算定解釈のために術式を並べてみてます。

腱切離・切除術は複数指にて算定が可能な点数になっています。

皮膚悪性腫瘍切除術は、特に複数指算定での対象術式として指定がないため、片手を同一術野とみなす手術です。

指ごとで算定できる項目の合計は4,290点×3指=12,870点、指ごとで算定できない項目の点数は11,000点。

こあざらし
この場合、腱切離・切除術 4,290点を3指分請求することが可能です

さいごに

指の複数算定に関する通知の解釈について、2つの記事に分けて、解説してみました。

ややこしいです。関節リウマチに対する指手術は意外と勘違いが起こってしまいがちなので、また、時間があるときに記事でまとめてみたいなと思います。

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この記事を書いた人

医療事務(診療所・病院)、レセプト審査(保険者)、医科歯科事務経験、介護事務経験あり。ブログは、査定事例の解釈・レセプト実務に必要な知識を重点的に更新♪

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