『指に係る同一手術野の範囲』レセプト算定解釈Vol.1(同じ指)

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こんにちは、こあざらし(@ko_azarashi)です。

今日は超ややこしい通知について書き綴っていきたいと思います。

こあざらし
指の手術についてです。
にゃこ
あの通知とっても分かりづらくて困ってたのー!

指の複数術式算定については通知に示されているところですが、あまりにも複雑な言い回しで書かれているため解釈しづらくなってます。

結果、よく分からないまま請求。ダメだったら査定されるだろうという判断で流してしまう部分ではないでしょうか。

正直なところ、審査側も混乱している場合が多々あります。

今回は、この通知の解釈について、話を進めていきますね。

こあざらし
私なりの解釈でご説明します。

きっと記事を読み終わったときに、今までこの通知に関して抱いていたモヤモヤがなんとなく解消されるのではないかと…。

こあざらし
第1部では、まず、基本となる『ア』の通知を理解するための記事をまとめます。
目次

『指に係る同一手術野の範囲』の解釈

指の複数手術を算定するためには、まず、『ア』の通知の中身を正確に理解している必要があります。

基本となるため、しっかりと読んでおきましょう。

こあざらし
解説においては足を省略していますが、手においての考え方が分かれば置き換えて理解することが可能だと思います。

『ア』の通知を解釈(複数算定可能な指手術)

ア 第1指から第5指までを別の手術野とする次に掲げる手術のうち、2つ以上の手術を同一指について行った場合には、「通則14」における「別に厚生労働大臣が定める場合」に該当する場合及び(ハ)に掲げる手術を除き、当該手術の中で主たる手術の所定点数のみを算定する。なお、(イ)及び(ロ)に掲げる手術については、複数指について行った場合には、それぞれの指について算定し、(ハ)に掲げる手術については、同一指内の複数の骨又は関節について行った場合には、各々の骨又は関節について算定する。

これから順に掲げていく術式の取扱いについて最初に説明した文章です。

『ア』の通知は(イ)(ロ)(ハ)という区分分けで説明が進んでいきます。

(イ)と(ロ)についてはそれぞれの指ごとで別々に算定ができる手術が記されており、(ハ)については同じ指内の骨や関節ごとに別々に算定できる手術が示されています。

(イ)末節骨から中手骨が同一術野

(イ) 第1指から第5指まで(中手部・中足部若しくは中手骨・中足骨を含む。)のそれぞれを同一手術野とする手術は、次に掲げる手術である。

  • K028 腱鞘切開術(関節鏡下によるものを含む。)
  • K034 腱切離・切除術(関節鏡下によるものを含む。)
  • K035 腱剥離術(関節鏡下によるものを含む。)
  • K037 腱縫合術
  • K038 腱延長術
  • K039 腱移植術(人工腱形成術を含む。)の「1」指(手、足)
  • K040 腱移行術の「1」指(手、足)
  • K040-2 指伸筋腱脱臼観血的整復術
  • K054 骨切り術の「3」中の指(手、足)(関節リウマチの患者に対し、関節温存を前提として中足骨短縮骨切り術を行った場合に限る。)

(イ)に規定する手術は「中手骨・中足骨を含む」という部分より判断して、中手骨・中足骨に対する手術を行った際に参考とする項目のように思われがちですが、少し解釈が異なります。

中手骨・中足骨を含む含まないの言い回しだと紛らわしくて理解しづらいので、敢えて、項目名を変えてみました。

『末節骨から中手骨・中足骨までが同一術野』である手術を示したのが()の通知なのです。

末節骨、中節骨、基節骨、中手骨から形成されている同一指内での範囲が同一術野ということになります。

例題1)同じ手術

中指 腱剥離術
中指 腱剥離術

中指の指内で別部位の腱剥離術を行った症例です。別部位や近接部位だとしても同じ指内であれば考え方は共通となります。

同じ指内の末節骨から中手骨の腱剥離を行ったのであれば、主たる1つの手術しか算定出来ません。皮切が異なったとしても指の算定ルールに従いましょう。

この場合、中指に対して腱剥離術×1回での算定となります。

例題2)通知内の異なる手術

中指 腱鞘切開術
中指 腱剥離術

中指の指内で別部位に対して腱鞘切開術と腱剥離術を行った症例です。別部位や近接部位だとしても同じ指内であれば考え方は共通となります。

同じ指内の末節骨から中手骨の間で手術をそれぞれ行ったのであれば、主たる1つの手術しか算定出来ません。例え、手術の種類が違ったとしても、同じ指内は1つと覚えておきましょう。

腱鞘切開術 2,050

腱剥離術 13,580

この場合、中指に対して点数の高い腱剥離術×1回での算定となります。

(ロ)末節骨から基節骨が同一術野

(ロ) 第1指から第5指まで(中手部・中足部若しくは中手骨・中足骨を含まない。)のそれぞれを同一手術野とする手術は、次に掲げる手術である。ただし、合指症手術にあっては各指間のそれぞれを同一手術野とする。

  • K089 爪甲除去術
  • K100 多指症手術
  • K090 ひょう疽手術
  • K101 合指症手術
  • K091 陥入爪手術
  • K102 巨指症手術
  • K099 指瘢痕拘縮手術
  • K103 屈指症手術斜指症手術
  • 第1節手術料の項で「指(手、足)」と規定されている手術(区分番号「K039」腱移植術(人工腱形成術を含む。)の「1」指(手、足)、区分番号「K040」腱移行術の「1」指(手、足)、区分番号「K045」骨折経皮的鋼線刺入固定術の「3」中の指(手、足)、区分番号「K046」骨折観血的手術の「3」中の指(手、足)、区分番号「K054」骨切り術の「3」中の指(手、足)(関節リウマチの患者に対し、関節温存を前提として中足骨短縮骨切り術を行った場合に限る。)、区分番号「K063」関節脱臼観血的整復術の「3」中の指(手、足)、区分番号「K073」関節内骨折観血的手術の「3」中の指(手、足)、区分番号「K080」関節形成手術の「3」中の指(手、足))及び「K082」人工関節置換術の「3」中の指(手、足)を除く。)

中手骨・中足骨を含む含まないの言い回しだと紛らわしくて理解しづらいので、こちらも項目名を変えてみました。

『末節骨から基節骨までが同一術野』である手術を示したのが()の通知なのです。

末節骨、中節骨、基節骨から形成されている同一指内での範囲が同一術野ということになります。

こあざらし
列挙されてる手術を見ても分かると思いますが、おおよそ末節骨から基節骨の間で行われる手術です。

あと、非常に忘れられがちな部分が、「指(手、足)」と規定されている手術の存在です。術式が省略されているため、ぱっと見では対象術式から外れているように見られることがありますが、この部分に該当するならもちろん対象術式となります

例題1)同じ手術

中指 骨内異物(挿入物を含む。)除去術 指(手、足)
中指 骨内異物(挿入物を含む。)除去術 指(手、足)

中指の指内で別部位の骨内異物除去術を行った症例です。別部位や近接部位だとしても同じ指内であれば考え方は共通となります。

同じ指内の末節骨から基節骨の骨内異物除去術を行ったのであれば、主たる1つの手術しか算定出来ません。皮切が異なったとしても指の算定ルールに従いましょう。

この場合、中指に対して骨内異物除去術×1回での算定となります。

例題2)通知内の異なる手術

中指 骨内異物(挿入物を含む。)除去術 指(手、足)
中指 爪甲除去術

中指の指内で別部位に対して骨内異物除去術と爪甲除去術を行った症例です。別部位や近接部位だとしても同じ指内であれば考え方は共通となります。

同じ指内の末節骨から基節骨の間で行われるとされる手術をそれぞれ行ったのであれば、主たる1つの手術しか算定出来ません。例え、手術の種類が違ったとしても、同じ指内は1つと覚えておきましょう。

骨内異物(挿入物を含む。)除去術 指(手、足)3,620

爪甲除去術 640

この場合、中指に対して点数の高い骨内異物除去術×1回での算定となります。

特殊例題3)合指症手術

中指 合指症手術
環指 合指症手術

中指と環指に合指症手術を行った症例です。

合指症手術にあっては各指間のそれぞれを同一手術野とすることとなっていますので、この場合、中指と環指間に対して合指症手術×1回での算定となります。

もしも中指、環指、小指の合指症であれば、中指と環指、環指と小指の2回として算定できます。

(ハ)骨の1節及び1関節が同一術野

(ハ) 同一指内の骨及び関節(中手部・中足部若しくは中手骨・中足骨を含む。)のそれぞれを同一手術野とする手術は、次に掲げる手術である。

  • 区分番号「K045」骨折経皮的鋼線刺入固定術
  • 区分番号「K046」骨折観血的手術
  • 区分番号「K063」関節脱臼観血的整復術
  • 区分番号「K073」関節内骨折観血的手術
  • 区分番号「K078」観血的関節固定術
  • 区分番号「K080」関節形成手術
  • 区分番号「K082」人工関節置換術
  • 区分番号「K082-3」人工関節再置換術

『骨の1節及び1関節が同一術野』である手術を示したのが(ハ)の通知なのです。

例題1)同じ骨に対する手術

中指 骨折観血的手術
中指 骨折観血的手術

中指の同じ骨内で別部位の骨折観血的手術を行った症例です。皮切が異なったとしても、同じ末節骨内に対して行われた場合、同じ中節骨内に対して行われた場合、同じ基節骨内に対して行われた場合、同じ中手骨内に対して行われた場合など、指の算定ルールに従い別々に算定することは出来ません。

この場合、中指に対して骨折観血的手術×1回での算定となります。

例題2)異なる骨に対する手術

中指 骨折観血的手術
中指 骨折観血的手術

中指の異なる骨に対する骨折観血的手術を行った症例です。

指の算定ルールに従い骨ごとに独立した算定をすることができます。

例題の場合、中指に対して骨折観血的手術×2回での算定となります。

2つの骨に対するものの例示では、末節骨と中節骨、末節と基節骨、末節と中手骨、中節骨と基節骨、中節骨と中手骨、基節骨と中手骨の組み合わせが算定可能になっています。

(ハ)に規定されている手術であれば、骨ごとに算定することができるため、末節骨、中節骨、基節骨、中手骨の最大4つまで(拇指の場合は中節骨がないため最大3つまで)算定可能という解釈になりますね。

例題3)通知内の骨折と関節脱臼に対する手術

手術通則

通知(7) 骨折整復と脱臼整復を併施した場合については、骨折部位と関節との距離やそれぞれの整復が非観血的に行われたか観血的に行われたか、また、一方の整復手技が他方の整復手技と個別に行われる場合と、併せて1手術とみなすのが適当な場合等によって異なるが、一般には近接部位の場合は通例同一手術野の手術として「通則14」により主たる手術の所定点数のみにより算定する。ただし、(4)の(ハ)に掲げる場合は別に算定できる。

中指 骨折観血的手術
中指 関節脱臼観血的整復術

この2つの組み合わせの場合、算定が分かれます。同じ骨を含む部分での手術であれば主たるものでの算定になり、異なる骨に対するものであれば各々の算定が可能と解します。

解釈を読むと、(4)の(ハ)に掲げる場合は無条件に算定していいとも解することができるので、ここの解釈が難しいですね。なかなか骨折と脱臼の観血手術を同時に請求している症例も少ないです。

例えば、同時手術でありがちなのがリスフラン関節脱臼骨折と中足骨骨折の併発などだと思われますが、この場合、まったく同じ部分に対する処理でなければ、その手術処理内容を詳記し、各々算定することができるパターンだと考えられます。

こあざらし
ただ、医学的観点からの審査をされることが多いパターンだと思いますので、断言はできません。

このパターンで査定されているものは今のところ見たことがありませんので…

こあざらし
違う骨への固定処置が行われた場合は各々算定できると考えるほうが自然なように思います。(骨折と脱臼の解釈は、私の勝手な解釈なので参考程度に。)

通則14に該当する場合

指に係る同一手術野の範囲と算定方法については次の通りである。
イ デブリードマンその他(イ)、(ロ)及び(ハ)に該当しない手術については、第1指から第5指までを同一手術野として取り扱い、当該手術のうち2以上の手術を複数指に行った場合には、「通則14」における「別に厚生労働大臣が定める場合」に該当する場合を除き、主たる手術の所定点数のみを算定する。

中指 腱切離・切除術(関節鏡下によるものを含む。)
中指 神経縫合術

通知の『イ』に示されていますが、通則14に該当すれば複数手術の特例として扱うことができます。主たる手術と従たる手術を100分の50として両方請求可能です。

こあざらし
指の通則に該当していなくても、こちらに該当している場合があり得ますので見落とさないように気をつけましょう。

さいごに

今回は指の算定方法を示した通知の解釈をまとめてみました。この部分は本当に読み解き方が難しく、理解しづらかったのですが、このような解釈に辿り着きました。

この解釈でレセプト請求を確認しましたが、私の解釈と合致している審査が多く、合ってるのかなと個人的には思ってます。

私も何度も悩みましたが、この考え方で読み解くと、この通知の並びがしっくり来ると思うんですね。

指骨の末から末までの手術、指の分岐までの手術、骨ごと関節ごと。

同じ指に対する手術を複数して同時に算定できるのは、(ハ)骨の1節及び1関節が同一術野の通知に該当する場合のみで、そのほかの場合は、いくら通知の一覧にある手術でも同じ指に対して複数算定することはできません。

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この記事を書いた人

医療事務(診療所・病院)、レセプト審査(保険者)、医科歯科事務経験、介護事務経験あり。ブログは、査定事例の解釈・レセプト実務に必要な知識を重点的に更新♪

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